嫌な出来事を反芻(はんすう)してしまうときの止め方

ふとした瞬間に、過去の嫌な出来事が頭の中で何度も再生されてしまうことはありませんか。
「あのとき、あんなことを言われた」
「どうしてあんな失敗をしたんだろう」
「もっと上手くやれたのに」
気がつくと、そのシーンを繰り返し思い出してしまい、心が重たくなる。まるで自分で自分を傷つけているように感じることもあります。
これは心理学では「反芻(はんすう)」と呼ばれる心の働きです。
反芻が続くと、気分が落ち込み、自己肯定感も下がってしまうことがあります。
けれど、少しの工夫で、このループから抜け出すことは可能です。
今日は、その方法を5つご紹介します。
1. 「止めよう」としない
嫌なことを考えすぎてしまうとき、「もう考えたくない!」と思えば思うほど、逆に頭から離れなくなることがあります。これは「シロクマ効果」と呼ばれる現象で、「白いクマのことを考えないでください」と言われると、かえって白いクマが頭に浮かんでしまうのと同じです。
ですから、「止めなきゃ」と力むのではなく、「今、私は同じことを繰り返し考えているんだな」と、淡々と気づくことから始めてみてください。自分を責めず、ただ事実を認めるだけで、反芻の勢いは少し弱まります。
2. 体を動かして思考の流れを変える
反芻は頭の中で同じ道をぐるぐる歩いているようなもの。
そんなときは、体を動かして違う流れをつくるのが効果的です。
- 外に出て散歩をする
- 部屋の片づけをする
- 軽くストレッチをする
これらは単純なことですが、体を動かすことで脳の働きが切り替わり、思考のループから抜け出しやすくなります。
特に自然の中を歩くことは、研究でもストレスを減らす効果が示されています。
3. 頭の外に出す
考えが止まらないときは、頭の中に留めておくからこそ苦しくなります。
紙に書き出したり、スマホのメモに入力したりすることで、「頭の中だけで抱え込む」状態から解放されます。
ポイントは、「きれいにまとめよう」としないこと。
思いついたことをただ書き殴るだけで大丈夫です。
「腹が立った」
「悲しかった」
「本当はこう言いたかった」
言葉にするだけで、気持ちは少しずつ整理されていきます。
4. 違う感覚に注意を向ける
反芻から抜け出すもうひとつの方法は、意識を「今ここ」に戻すことです。
- 温かいお茶を飲んで香りや味に集中する
- アロマを焚いて匂いに意識を向ける
- 好きな音楽を聴いて、音のひとつひとつを味わう
五感を意識することで、頭の中でぐるぐるしていた思考が少しずつ静まります。
瞑想やマインドフルネスと呼ばれる習慣も、この仕組みを利用しています。
5. 「今の自分」を労わる
嫌な出来事を思い出してしまうとき、私たちは「過去の自分」を何度も責めています。
でも大事なのは、「今、苦しんでいる自分」を守ることです。
「よく頑張ったね」
「つらかったよね」
「大丈夫、ここにいるよ」
そんなふうに、自分に優しい言葉をかけてあげてください。誰かにかけるのは少し照れくさい言葉でも、自分には遠慮せず贈って大丈夫です。
まとめ
嫌な出来事を反芻してしまうのは、誰にでもある自然な心の反応です。
止めようとするのではなく、
- 気づくこと
- 体を動かすこと
- 外に出すこと
- 五感に意識を戻すこと
- 自分を労わること
こうした小さな工夫を積み重ねることで、心は少しずつ軽くなります。
どうか忘れないでください。あなたが嫌な出来事を思い出して苦しんでいるのは、弱いからではなく、それだけ真剣に、真面目に生きている証拠です。
今日もよく頑張りましたね。どうぞ安心して休んでください。
おかえり、今日もよくやったね。